Three Billboards Outside Ebbing, Missouri
去年の賞レースでトップを争っていた映画を挙げるとすると、
「君の名前で僕を呼んで」
「シェイプ・オブ・ウォーター」
「スリー・ビルボード」
この3作になるだろうか。
この名作揃いの中でも、「スリー・ビルボード」は私のいち押し(「君の名前で」とめっちゃ競るけど……)。
アカデミーではフランシス・マクドーマンドが主演女優賞(女性ノミニーを立たせた受賞スピーチはめちゃくちゃカッコ良かった)、
サム・ロックウェルが助演男優賞(同じく受賞スピーチでフィリップ・シーモア・ホフマンの名前をだしたのには泣けた)を獲ったけど、
私はあと、少なくとも脚本賞くらいはこの映画が獲ってよかったんじゃないかと思ってる。
実際受賞した「ゲット・アウト」も悪くなかったけど、私の価値観ではただのマインドファックじゃ、あのドラマには太刀打ちできないもの。
作品賞を獲った「シェイプ・オブ・ウォーター」も確かにいい映画で(魚人を見たリチャード・ジェンキンスが「なんて美しいんだ…」って言うシーンでは涙がドバーッと出た)、
何よりギレルモ・デル・トロ監督の愛され具合には見ているこちらが幸せな気持ちになった。
けど、先年、「ラ・ラ・ランド」ではなくて「ムーン・ライト」が作品賞を獲った時のように、「アカデミー協会株上げたな!」っていう感覚にはならなかった。
まあ、それは好みの問題ですな。
「スリー・ビルボード」は俳優陣の演技がよかったことが目玉のように言われている。も、ち、ろ、ん演技は超弩級だった。
主要登場人物3人にオスカーノミネーションがあって、2人が受賞、しかも3人のうち2人は助演男優の同じ枠でのノミネートだったし。
でも映画って、演技が素晴らしいだけでは、手放しで「いい映画!」とは言えないもので。
私はこの映画の肝は緻密に組み立てられ、かつ温度のある生々しいストーリーと、人間臭すぎるキャラクターだったと思う。
特にサム・ロックウェルが演じたディクソンがなんとも味のある素晴らしいキャラクターで、単細胞で、幼稚で差別主義者な上に暴力的という絶対に近くにいて欲しくないタイプの人間でありながら、
“ mom (お母さん)” って言う時に絶対に吃音が出たり、
威圧的に振舞っているくせに同僚警官にはないがしろにされていたり、
映画を観る前に想像していた人物像と少ーしずつずれていって、最終的にはこの人こそが映画の鍵になっていて驚かされる。
ディクソンだけじゃなく、キャラクターの人間臭さが観るものを子気味よく裏切るシーンがたくさんあった。
ディクソンにフォーカスすると、
“HOW COME CHIEF WILLOUGHBY?(ウィロビー署長どうしてなの?)”
あのビルボードを見て、どうしてあんなに怒ったのか、その理由にも、
ウィロビー署長からの手紙を食い入るようにして読むところにも、
そのあと無我夢中でとった行動にも、
彼の姿には善と悪、信念と怠惰、友情と敵意、あらゆるものの間を大きく振れる人間らしさがにじみ出ている。
その振れ方を、ここまでドラスティックに描き、
しかもそれをヒロイックになりすぎないように、泣かせようという意図=ウェット感を排除して仕上げられた作品ってあんまりない。
たったひとりの人が信じていてくれたという事実、
その人の「お前はいい人間だ」というその言葉だけで、カス人間が一転、まるで聖者のような姿を見せる。
それは私も、あなたも、みんなが持つ、普遍的な人間の性質だと思う。
人はきっとたったひとりの人が信じてくれるだけで強くなれる。
映画は最後まで問題を何も解決させず、人生のビターテイストを甘い味付けで着地させることは一切しないけれど、その中にひとさじの希望が感じられるエンディングは、観た人間に、
「いい映画だった…」と、
とってもいいため息をつかせてくれる。
余談ですが。
日本劇場未公開のサム・ロックウェル出演の2014年の映画が今年6月に1本DVD化されてます。
サム・ロックウェルにくわえてキーラ・ナイトレイ、クロエ・グレース・モレッツというそそるメンツの映画なんですが、、、
原題「laggies」(”グズグズ屋”みたいなかんじ)の邦題が、
「アラサー女子の恋愛事情」ってほんとどういうことなの……。
え? 「ラグジーズ」でいいやん、、、、
この邦題つけた人にかかったら「グーニーズ」とか「厨二病男子のハラハラ大冒険」になるの? 助けて。
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